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摩擦撹拌溶接

摩擦撹拌溶接 Friction Stir Welding

自動車業界はかつてない程難しい局面に直面しております。安全で燃費が良く、且つ、先端機能の装備が要求されている一方、景気はここ数年盛り上がっておらず、また、衝突に関する規制やガソリン価格の上昇により車の値段に対する圧力は増えている中、消費者は追加機能の価格への転嫁を受け入れておりません。日本の自動車メーカーは生産性の向上、技術革新に力を入れてきたので成功をおさめて来ましたが、この成功の裏には品質に対し常に気を配り、又、FSWのような新しい技術を製造に取り入れてきた事にあります。

1991年にTWIにより特許がなされた固相接合と呼ばれるFSWは円柱形をしたつば付のピンを用い、それを回転させながら接合しようとする2枚の板の接合部にゆっくりと押入れいきます。ピンと板との間に発生する摩擦熱により、融点に到達する前に板が軟化し、特殊な形状を施したピンは軟化した部分を撹拌し一体にするものです。


<Cross Section of a Linear Friction Stir Weld>

 
接合強度アップ、より早く、より安く

FSWは従来の車作りに比べて数々の利点があります。

欠陥ゼロ、強度アップ、堅固な接合が期待出来ます。従来の抵抗スポット溶接、アーク溶接、レーザー溶接等に比べ環境への負荷が小さく、環境に優しい手法です。

スパッター、有害煙、放出熱や光等は、溶解をベースにする溶接によって生成される副産物のほんの一部であり、FSWではこれらは皆無です。MTSのお客様の一人でありますロッキードマーチン宇宙システム社(LMMSSC)によれば、NASA向けの外部燃料タンク製造においてはFSWは欠陥ゼロが達成されたとの事です。

ボーイング社はデルタロケットの製造にFSWを使っています。最初の4年間で延べ2.5kmの接合を行いましたが欠陥はゼロでした。FSW導入前はGTAWやVPPAWを使っておりましたが平均で8.4m長毎に欠陥が検出されました。FSW導入後はラインのX線検査を廃止しました。その後、FSWへの切り替えにより打ち上げ用デルタロケットの製造コストが大幅に低下しボーイング社の競争力を上げる事になりました。


<MTS I-STIR Aero at Eclipse Aviation>

 

エアバス社とEclipse社もMTSのお客様で、接合部の強度アップにFSWを使用しています。エアバス社は民間航空機の胴体部のスキン突合せ溶接にFSWを使うことを計画しています。すでに実物大のプロトタイプをFSWで製作し試験中です。

Eclipse社はエアバス社のものより小型の飛行機を製作しております。小型ではありますが、FSWを用いてリベットの数を60%減少させました。強度は3倍増加し、製作時間は67%減を達成したとの事です。Eclipse社は年間1,500機の製作を計画しており、製造時間の短縮はコストに大きく跳ね返ってきます。接合長さに換算すると一日あたり1kmの接合になります。Eclipse社は5軸装置を2台MTSに発注し、2号機は本年末の据付完了を予定しています。

FSWの自動車への応用

FSWはスポット溶接とテーラードブランクの二つの溶接分野において、自動車産業でも有望視されています。FSWを用いたスポット溶接には、従来の抵抗溶接(RSW)に比べて多くの利点があります。RSWは大きな電力消費を伴い、溶接ガンには溶接かすやを取り除く物をつける必要があります。

アルミ溶接では溶接強度も低く脆いので溶接が困難ですが、FSWにはこれらの制限がありません。例えば、FSWを使用すると90%省エネが出来ることが報告されています。この差は、FSWは融点までに達しない固相接合プロセスであるためです。FSWを使用したアルミ接合は強度も高く溶融を伴わない接合であるため堅固です。また、溶融を伴わないので合金に見られる空隙が発生しません。

さらに、2種類のスポット溶接が可能です。先ずはピンを一体で作る(Fixed Pin Tool Weld:FPTと呼ばれる固定ピン)ピンツールがあります。ピンの長さが固定になりますので板厚が変わる場合はピンを交換しなければなりません。2番目のタイプは長さが調整できるピンツール(Adjustable Pin Tool Weld:APT)です。ピンとショルダが分離されて出来ており、ピンはヘッド内部のアクチュエータに結合されています。ピンが上下しますので板厚の変更によるピンの交換が不要です。


<Fixed Pin Tool Weld>

<Adjustable Pin Tool Weld>

APTにはオプションとしてキーホールを埋めることも出来ます。通常ピンを引き上げるときにキーホールが残ってしまいます。FSWは材料を溶解しませんのでピンを引き上げると周りから材料の流入がありません。現状ではこの穴を防ぐにはFPTに比べると時間が余計かかりますが、RSWよりは短い時間で済みます。


<FPT Spot Weld Cross Section>
Courtesy: Ford Motor Company


<APT Spot Weld Cross Section>
Courtesy: South Dakota School of Mines and Technology

MTSではスポット溶接ロボット用に2種類のヘッドを用意いたしております。これらのヘッドは変位制御および荷重制御が出来ます。ヘッドには生産性及びロバスト性を上げるためのセンサー類を取り付けできます。MTSはAPTを提供できますので板厚変更に伴うピンの変更が不要です。


<MTS Robot-Mounted Spot Welding Head>

レーザー溶接にとって変われるか

レーザー溶接はその高速性によりTWB製造によく用いられます。しかしながら、アルミへのFSWの応用も捨てたものではありません。6000系アルミでは10m/分の溶接速度が達成されました。FSWでの接合面はレーザーによるものよりもしなやかですので、接合の均一性は問題になりません。溶接前の表面処理もレーザーでは考慮する必要がありますが、FSWでは表面処理が不要です。事実、切粉や油で汚れていても接合が可能です。


<Prototype FSW System Suitable for Tailor Welded Blanks>


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